

「うちの地域には有名な観光地がないから、観光客は来ない。」
地方へ行くと、このような声を耳にすることがあります。しかし、本当にそうなのでしょうか。確かに、全国的に知られた観光地があれば集客に有利です。有名なお城や温泉地、絶景スポットがあれば、人が訪れるきっかけになります。しかし、それは「あるに越したことはない」という話です。有名な観光地がないから人が来ないのではありません。多くの場合、その地域の魅力が知られていないだけなのです。人は知らない場所を旅の目的地には選びません。
逆に言えば、魅力が伝われば訪れる価値のある場所になる可能性を秘めています。その可能性を大きく広げることに貢献できるのが「観光タクシー」です。
私は、これまで観光タクシーに取り組む多くのタクシー会社のホームページを調査してきました。その中で気づいたことが、掲載内容の多くは、〇時間〇円という料金案内か有名観光地を巡る定番コースのどちらかに偏っているということです。特に全国的な知名度の高い観光地を持つ地域では、どの企業も「どこを、どのように巡るか」が商品になっています。一方で、強力な観光資源がないと考えられている地域では、「何時間でいくら」という価格面だけが記載されているケースがほとんどです。しかし、そこに大きな可能性が隠されています。本当に魅力がないのでしょうか。もしかすると、地元の人たちが見慣れすぎて価値に気づいていないだけかもしれません。
例えば、米どころの地域であれば、秋になると見渡す限り黄金色に輝く稲穂の風景が広がります。地元の人にとっては当たり前の景色です。しかし都会から訪れた人にとっては、その風景だけで感動するのです。それはどこに行けば観れるのか・・・どのガイドブックにも書かれていない風景です。
雪国では、冬になると人の背丈を超える雪の壁に囲まれた歩道が現れます。地域の人にとっては日常の光景ですが、雪の少ない地域で暮らす人から見れば、それは驚きと感動の対象です。
大根が一面に干される畑の風景。海辺の小さな漁港。昔ながらの商店街。地域独自のマンホールのデザイン。地元の人が何気なく通り過ぎている景色の中に、訪れた人が思わず足を止め、写真を撮りたくなる魅力が眠っているのです。
観光とは、ずしも有名な観光地や施設を観ることではありません。その土地ならではの文化や暮らし、風景に触れることです。だからこそ、これまで観光資源と考えられてこなかったものにも、人を惹きつける力があります。問題は、その価値に誰も気づいていないことです。そして、気づいていても商品化されていないことです。さらに言えば、外に向けて発信されていないことです。そこで大きな役割を果たすのが「観光タクシー」です。観光タクシーの本質は、単に観光地を巡る移動手段ではありません。地域の魅力を発見し、伝え、体験してもらうための商品なのです。その価値を語り、伝え、体験として届けることです。観光タクシーには、その役割を担う大きな可能性があります。地域の風景を観光資源に変え、人と人をつなぎ、地域の未来をつくる。
観光タクシーとは、まさに「地域の魅力を発掘するプロジェクト」なのです。